【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
嫉妬をしない性格であるわけではない。
ただ、遼雅さんの用事がいつも業務であることを理解しているだけだ。
これが単純に、好きでいかがわしいお店に行っていると言われたら、私もかなりへこんでいるところだと思う。いや、それもただの私の感情でしかないのだけれども。
「そうですね。美人というのもそうですが、私にとってはかわいい人です」
「な、」
「うん? どうしたんだい?」
思わず声が上がってしまった。
口を引き結んでも、さすがに聞き取られてしまったらしい。不可思議そうな顔をする初老の男性から目をそらして橘専務のほうを見つめたら、すこしいたずらな瞳と視線が絡まった。
「いえ……」
「はっは、橘くんが急に惚気てしまうから、彼女もおどろいてしまったみたいだ。すまんすまん」
「失礼しました。私はつまの話になるとどうも饒舌になってしまうので、普段は控えているんです。安西社長もここだけの話にしておいてくださいね」
「はっはっは。そうか、愛妻家だったんだなあ。いやあ、若くていいなあ! 君の情熱に免じて、黙っておくとするよ。それじゃあそろそろお暇するかな。奥さんによろしく」
「ええ、ご足労いただき、ありがとうございました。こちらで失礼させていただきます」
専務と一緒に頭を下げて、扉が閉まる音とともに顔をあげた。
「ごめんね、すこしお昼の時間にかかってしまいました。コーヒーカップは自分で片付けますよ」
「……いえ、私の仕事ですから、専務こそ休憩されてください」
「かわいい人」におどろいて、声をあげかけてしまったことを言及されるかと思っていたから、肩透かしを食らったような気分だ。
ただ、遼雅さんの用事がいつも業務であることを理解しているだけだ。
これが単純に、好きでいかがわしいお店に行っていると言われたら、私もかなりへこんでいるところだと思う。いや、それもただの私の感情でしかないのだけれども。
「そうですね。美人というのもそうですが、私にとってはかわいい人です」
「な、」
「うん? どうしたんだい?」
思わず声が上がってしまった。
口を引き結んでも、さすがに聞き取られてしまったらしい。不可思議そうな顔をする初老の男性から目をそらして橘専務のほうを見つめたら、すこしいたずらな瞳と視線が絡まった。
「いえ……」
「はっは、橘くんが急に惚気てしまうから、彼女もおどろいてしまったみたいだ。すまんすまん」
「失礼しました。私はつまの話になるとどうも饒舌になってしまうので、普段は控えているんです。安西社長もここだけの話にしておいてくださいね」
「はっはっは。そうか、愛妻家だったんだなあ。いやあ、若くていいなあ! 君の情熱に免じて、黙っておくとするよ。それじゃあそろそろお暇するかな。奥さんによろしく」
「ええ、ご足労いただき、ありがとうございました。こちらで失礼させていただきます」
専務と一緒に頭を下げて、扉が閉まる音とともに顔をあげた。
「ごめんね、すこしお昼の時間にかかってしまいました。コーヒーカップは自分で片付けますよ」
「……いえ、私の仕事ですから、専務こそ休憩されてください」
「かわいい人」におどろいて、声をあげかけてしまったことを言及されるかと思っていたから、肩透かしを食らったような気分だ。