【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

お荷物になりたいわけではない。絶対にそうじゃない。

遼雅さんにとっての心地よい場所であってほしい。だから、おかしな執着や、嫉妬なんて遼雅さんには絶対にぶつけたくなかった。

まっすぐに見つめて「わかってくれますか?」と首を傾げたら、遼雅さんが音もなく、すぐ近くまで体を寄せてくれる。


「今、すごい抱きしめたい。いい?」

「え、あ、どうぞ?」


言い終わる前にやさしい熱につつまれて、こころがほどけてしまった。

抱きしめられたら、さみしさなんてどうでもよくなってしまう。

いつもそうだから、きっと遼雅さんが帰ってきてくれるなら、私はどんなことでも許してしまうのだろう。


「あー、もう。本当にかわいい。かわいすぎて、参ってしまった」

「ん、耳、くすぐったい、です」


つよく抱きしめて耳元に囁かれる。

小さく抗議したら、遼雅さんの声がますます楽しそうに笑っていた。いたずらをするように「ゆずは」と囁き入れられる。


「あ、う、もう、それだめです」

「うん?」


遼雅さんのあまい声に囁かれたら、何も考えられなくなることに、気づかれているのだろうか。


「何がいや?」

「ん、いや、じゃない、けど」

「俺はもっと、くっついていたい」


真っ直ぐに囁かれて、胸に突き刺さってしまった。あつい吐息が耳に触れて、くらりと倒れてしまいたい気分でいっぱいだ。

< 164 / 354 >

この作品をシェア

pagetop