【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか？【完】

「やっぱり、お昼は……」

「柚葉さんは、俺のこと、大切にしてくれているよね」

「え？　大切に？」

「いつも俺のこと、考えてる」


柔らかな声と同じくらい、瞳がずっとあまい。

満ち足りたような目が笑って囁いてくれていた。まるで私の感情なんてとっくに知られていそうだ。

そらせなくて、見つめ返している。

やさしい指先が頬を撫でる熱で、とろけてしまいそうになった。


「もっと欲張ってほしいし、もっとあまやかしたいんだ」

「もう、じゅうぶんすぎるくらいです」

「柚葉さんは慎ましくてかわいい女性だから、ずっと俺の中に隠しておきたくなる」

「ええ？　なんで、そんな」

「隠して、二人だけになったら、すこしだけあまえてくれる気がするから」


もうとっくに、私のことなんてすべて見透かされている気がする。

うまく答えられずに黙り込んだら、いつもの調子で唇にキスを落として「かわいい」と囁かれた。もう、すこしも抜け出せない。


「ばれないところでなら、あまやかしてもいいんですよね？」

「え、と……、ばれない？」

「うん、例えば、こことか」

「……役員室ですか？」


たしかにお昼はほとんど人も来ない。

役員室に来るような人は基本的にアポイントを取ってくるから、鉢合わせる可能性も低いだろう。