【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「もう、からかわないでください」
「いつも本気だよ」
あつい瞳だ。もう、ずっとここにいたくなってしまいそうで目が眩んだ。ちらりと時計を見ようとしたら、あたたかい指先に視界を覆われてしまう。
「遼雅さん?」
「時間が止まればいいのにな」
まるで、離れがたい人を引き留めるような言葉だ。
あまい砂糖菓子のような熱が胸に詰まって、声が滞ってしまった。ずっとそばにいると言いたくなってしまうから、本当に、恋はずるい。
「……やっぱり、あまやかしのプロです」
「ただきみを、手放したくないだけ」
「ああ、もう、……ずるい」
そんなふうに言われたら、いくらなんでも勘違いしてしまいそうだ。
瞼に触れている手首に触って、名前を呼んでみる。
「りょうが、さん」
たったそれだけであっさりと剥がれた拘束のさきで、遼雅さんがすこし困ったような、柔らかい目で私を見つめてくれていた。
あまい人、やさしい人。私の大好きな人。
「行っちゃいますか」
「うう、行ってほしく、ないんですか?」
まるでやきもちを妬く子どもみたいだ。
思い当たって、急に胸が苦しくなってくる。それすらも遼雅さんのあまやかしだとしたら、もう、勘違いしておかしなことをしでかしてしまいそうだ。
ちらりと見上げる先にいる遼雅さんが、私の問いかけに苦笑してしまった。