【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
たっぷりと時間を置いて、やわい笑みを浮かべた人がゆっくりと囁いてくれる。


「そう見えるなら、そうなのかもね」

「どういう……」

「行っても良いから、その代わり、約束してください」

「なにを、ですか?」

「朝食から、柚葉さんの料理を食べられるのはすごくうれしいです。でも、起きてすぐに柚葉さんにキスできないのは嫌だから、ベッドで俺も起こしてほしい」

「ええ? でも」

「ゆっくり支度するよ。かわいい奥さんのこと盗み見ながら」

「盗み見って」

「……時間、たくさん奪ってしまいました。峯田さんが心配するといけないから、そろそろ行っておいで」


やさしい言葉で背中を押されてしまう。抱きしめられていた腕が簡単に離れて、熱がほどける。


「いってき、ます」

「――必ず帰ってきてね」


好かれていると勘違いしそうだ。



* * *


「おせえ」

「ごめん」

「ったくのろまが」


すぐに出るはずが、結局30分も待ち合わせ時間を過ぎてしまっていた。

もちろん壮亮からは鬼のような連絡が入っていて、慌ててエントランスに降りてきたところだ。悪態をつきながらもゆっくりと歩き出してくれる。


「また忙しいのか」

「あ、ううん。大丈夫」

「あ? 今日はどうした」

「今日は……、ちょっと話し込んでしまって」

「あ?」


あまり深く聞かないでほしい。

ちょっとね、と笑って見せたら、聞かれたくないらしいことを察した壮亮に頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。

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