【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「時間ねえし、定食で良いか?」
「うん、あ、そうくん、この間のプリンのお礼」
「あー、別にいらねえって」
いらないと言いつつ、しっかりと手が握ってくれている。
お菓子作りをしたらいつも姉が喜んでくれた記憶がある。あんまりにもうれしくて、それが趣味になってしまった。
高校の時にはよく壮亮に食べてもらっていた。そのころから、壮亮には、お返しやお礼にお菓子をせがまれるようになったことを覚えている。
会社のすぐ近くの定食屋に入って、指定された席に座り込んだ。目の前に座る壮亮は今日も不機嫌そうな顔をしているのに、あまり不快な気分にさせてこないから不思議だと思う。
「んだよ」
「ううん。この間はありがとう。あの件は、結局」
「ああ、あいつがいろいろ動いてんだろ」
「あ、もう知ってた?」
話しながら、壮亮が有無を言わせずランチのAセットを二つ注文している。いつも勝手に頼まれるから慣れてしまった。
遼雅さんとのデートの時に、食べたいものを聞かれてひどく狼狽えてしまったくらいだ。
「俺も近々顧問弁護士交えて事情聴かれるっぽい」
「え、そうなの? 私は全然、されてないなあ」
「されてないなあ、じゃねーよ。なんだその顔」
「おどろいた顔……?」
「あー? 上目遣いすんなボケ! 危機管理ガバガバかよクソ」