【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「そうか、まったく気が利かない爺で申し訳がない」
「会長?」
「……二人が良い仲だったなら、初めから教えてくれていればよかったじゃないか」
「あの、」
「わしは大歓迎だ。なに、社内では言わなければいい。そうすれば秘書も続けていられるだろう? 橘くんと佐藤さんなら、お似合いじゃないか! 橘くんが懸念するようなことを佐藤さんがするとは思えん」
「会長、佐藤さんと私はそういう仲では……」
「そうと決まったら、さっそく入籍してくれて構わない。いやあ、よかったよかった。これで先方にもしっかり断りを入れられる。なあに、心配ないさ。爺がお節介して、恋人の仲を引き裂いてしまったと言えば、相手も分が悪い分、大ごとにはせんだろう」
「ですから、かいちょ……」
「いやあ~。二人が夫婦になるのなら、万事解決じゃないか。よかったよかった。このままでは、橘くんを婚約者が居ながら佐藤さんを誑かした悪い男として処分することになるところだった。二人が思いあっているのなら、すべてが丸く収まる」
「橘くん、責任を取りたいんだろう。隠していないで、早く結婚しなさい」
にっこりと微笑んだおじいさんは、まるで都合の悪いことのすべてが聴こえなくなってしまったような口ぶりだ。
まるで聞いてくれない。
「そういうことで、よろしく頼むよ」