【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
おさとうきゅうさじ
「すごくおいしいです」
「よかったです」
何度見てもため息が出てしまいそうなくらいに、うつくしい微笑みだと思う。
高級なフレンチでも食べていておかしくないような感嘆なのに、彼が手に持っているのは私が作ってきたお弁当だ。
一緒にお昼を食べたいと誘われた次の週から、本当に遼雅さんはすべてのお昼休みを会社で過ごしてくれるようになった。
どんなに忙しくても、時間を調整して必ずオフィスに戻ってきてくれている。
朝はすこしだけ早く起きて、遼雅さんと一緒にリビングへ行くようになった。
『遼雅さん、私、起きますね』
『ん、ゆず、は?』
『はい』
『まって、俺もおきる』
『寝てていいですよ?』
『いやだ』
『いや、なの?』
『はは、うん。いやだ。ゆず、きすしたい』
『今日も?』
『いつも』
朝の旦那さんは、ちょっぴり子どもみたいな喋り方になる。細やかに笑って、やさしく唇を押しつけられる。
ちゅう、と吸い付いてすぐ近くでじっと見つめてから私が起こしかけていた体をやさしい腕で引いて、胸に抱き込んでくれる。
『あー……、ゆずは、かわいい……』
『ん、くすぐったっ』
『おれの、ゆずはさん』
やさしい温度は、いつもすてきな匂いと同じく、私のこころを、もっと眠っていたくさせてしまうから危険だ。とろとろの瞳とぱちりと視線がぶつかる。
首を傾げたら、もう一度ちゅ、とキスを送ってくれた。
『かわいい』
『ん、う、褒めすぎ、です』
『あはは。柚葉、おはよう』
『はい。遼雅さん、おはよう、ございます』