【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
特段変わったところのない料理なのに、遼雅さんは本当に褒め上手だと思う。
今日も遼雅さんの褒め上手はいかんなく発揮されていて、ひとつ口に入れるたびに表情をほころばせて、目が合うたびに「すごくおいしい」とか「いつもうれしい」とか、やさしい言葉ばかりを選んでくれる。
「最近は、困ったことはないですか?」
「はい。特に何もないですよ」
「それは良かった。何かがあったらすぐに連絡してね」
穏やかすぎるくらいに平穏な時間を過ごしている。
総務部の仕事をしていたらしい時期からは考えられないくらいに平穏で、仕事に対してもより丁寧に、細かく気を配ることができるようになってきた気がする。
専務は何でも自分でしてしまうから、掛け合って、すこし私の仕事の分量を増やしてもらうようにしていた。
「疲れていませんか?」
「ふふ、大丈夫ですよ。……遼雅さんこそ、いつもわざわざお昼のためにお外から帰ってきてくださって……、無理をしていませんか?」
「あはは、大丈夫です。柚葉さんに会いたいだけです」
相変わらずとろけてしまいそうなくらいにやさしい人だ。あまい瞳に見つめられて、うっと言葉に詰まってしまった。
「かわいい」
遼雅さんは私が言葉に詰まるところを見ていることさえ楽しんでしまうみたいだから、困ってしまった。
「かわいくはないです」
「あはは、恥ずかしがるところがまた、どうしようもなくかわいいから困る」
「もう……」