【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
急いで食べ終わって、箸を置く。手を合わせてごちそうさまでしたと言えば目の前のソファに座っていた人が、同じように声をあげてくれた。
遼雅さんはいつも私が食べ終わるまでずっと待ってくれている。そういうところにも胸がぽかぽかしてしまうのだ。
「今日もありがとう。たっぷり充電できました」
「お粗末様です」
お弁当箱を片付けて大きなランチバッグに入れる。
いつも私が持っていくと言っているのに「重いだろうし、誰かに奪われたら困るから、俺が厳重に注意して運びます」と茶化されてしまって、結局遼雅さんに持って行ってもらうことになってしまった。
以来、社内では「橘遼雅が愛妻弁当を持参しはじめた。しかもめちゃくちゃなボリューム」との噂が広まりつつあると聞いて、頭を抱えたくなってしまった。
当の本人は全く気にすることなく、私がしまったランチバッグをさらりと受け取って、自分の横に置いている。
「お弁当箱の警護は任せて」
「もう。誰も盗みません」
「そう? 俺は柚葉さんのお弁当を楽しみに頑張ってる男だから、信じがたいな」
あまい笑みに逃げ出したくなって、呼吸を整えている。お昼の一時間は、隠れたくなってしまうくらいのやさしさと戦っているのだ。