【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
私を撫でていた指先が、ぴたりと頬に寄り添う。
瞳はあつい。もう、ただそれだけで、何を提案されるのかわかってしまうから恐ろしいと思う。
「……今夜、きみを抱いても?」
絶対に私の意思を聞こうとしてくれる。そのたびに逃げ出したくなるのに、どうして私は頷いてしまうのだろう。
懇願する瞳に頷きたくなって、口を開いた。
「昨日も……、遅くまで、その」
「そうだね。でも今日もきみがほしい」
「お疲れではないですか」
「何度も言うけど、俺は柚葉に触れてる時が一番落ち着くから」
絶対に逸らさせない。まっすぐな情熱が胸に刺さって、あっけなく陥落してしまう。
「じゃあ、今すぐ、ぐっすり眠ってください」
「うん?」
「眠ってくれたら、……その、夜」
「柚葉さんは、本当に俺を煽るのがうまいね」
「……煽ってないです」
「はは、じゃあ、もったいないけど、柚葉さんの羽根の在処を今日こそ暴きたいから、寝ます」
「もう……、おやすみなさい」
「おやすみ。ゆずは」
本当に眠ってくれるのか半信半疑だったのに、案外あっさりと寝息が聞こえてきて驚いてしまった。
毎日ハードワークで、私にまで構っている。家でも仕事をしている姿を見るから、遼雅さんの頭の中はたくさんのタスクであふれかえっていることだろう。
すこしでも安らかに眠っていてほしい。
やさしく髪の毛を撫ぜれば、遼雅さんの頬がやわくほころんだように見えた。
休憩が終わってしまうまであと30分だ。
できるだけ体を動かさないように注意しながら、ゆっくりと髪を撫で続けた。