【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

眠っている間に私が抜け出したと気づいたら、遼雅さんはすこし拗ねたような格好をしてしまいそうだ。

想像できてしまうから、愛おしい。


「あとで、起こしに来ますね」


そっと囁きながら遼雅さんの頭を私の腿からおろして、代わりにクッションを挟んだ。遼雅さんが一瞬、すこしだけ眉を寄せたように見えて、こぼれそうになる笑いをこらえている。

こんなにも穏やかなお昼休みがあるのなら、毎日お仕事を頑張りたいと思えてしまうからすてきだ。

遼雅さんがくれるものは全部があたたかくて、胸がどきどきしてしかたがない。毎日、明日が楽しみになってしまう。好きの力の大きさで、足元がほわほわしてくる。


「ちょっと、給湯室に行ってきますね」


聴こえていないだろう人の耳に囁いて、頬を撫でた。

私が眠っている間、遼雅さんが額にキスをしてくれたり、頬や髪を撫でたりしてくれていることを知っている。

眠くて声をあげることはできないけれど、そのやさしい仕草がとても好きだ。

同じようにできているだろうか。


ひとしきり撫でて、静かに立ち上がる。

お昼用に拝借した二人分のティーカップを持って、そっと役員室を後にした。

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