【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

秘書課の管理体制も変更になり、お昼の時間帯や、秘書が部屋に一人で待機しているときには必ず施錠がなされるようになった。

そのうち秘書室と役員室は個別のセキュリティーロックをして、カードを持っていない人は入室できないようにするつもりらしい。

今は応急処置で、鍵をかけて過ごすようにと指示があった。


遼雅さんが動いてくれたのだろう。

一緒にお昼を摂ることを提案された日の会議で告知されたから、遼雅さんの手腕に驚かされてしまった。だから、あんなにも自信たっぷりにばれないと言いきれたのだ。

本当に、どこまでもスマートな人だと思う。


給湯室はこの部屋から出てすぐ右端に位置している。

ちらりと時計を見て、まだ13時まで5分ほど時間が残っているのを確認して、部屋の鍵を首からかけた。

片手に重ねたティーカップを持って、部屋の鍵を開いて外へ出る。

専務付きの秘書室を出れば、人ひとりいない静かな廊下と対面した。

どこの部屋も最低でも後5分間は扉が開かない仕様になっているから、ゴーストタウンのような、おそるべき静けさだけが存在している。

何となく肌寒さを感じて、身震いしてしまう。

遼雅さんにはあまり部屋から出ないようにと言われていたから、急いで用事を済ませようと足を踏み出していた。
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