【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
おさとうひとさじ
「きゃっ、」
ぼうっとしていた。
今日は少し忙しかったし、ご飯を食べ終えてうつらうつらしてしまっていた。
顔には出づらいみたいだけれど、私は内心どきどきしていることばかり。ぼうっとしながらお皿洗いなんてするから、シンクの落としたお皿が真っ二つだ。
姉から引き出物として貰ったものだったことを思い出して、指先が固まる。
「柚葉さん?」
「あ、橘さん、ごめんなさい」
リビングからひょっこりと顔を出しているその人は、誰がどう見ても綺麗だと言ってしまいそうな顔立ちだ。
彼は私を見とめた瞬間に、すぐ隣までたどり着いてしまう。
「あ、あの」
「大丈夫ですか? けがはない?」
「あ、もちろんです。ちょっとぼうっとしていて」
「ぼうっと? 俺がやればよかった」
「いえいえ! 専務にやらせるわけには……」
「柚葉さんがケガするくらいなら、いくらでもやるよ」
「橘さん、」
「名前」
咎めるような声にうっと詰まってしまった。
相手からは真顔に見えるらしいけれど、内心は目が回りそうだ。橘さんはいい匂いがする。
「遼雅さん」
「はい、よくできました」
さりげなく検品するように、美しい指先に触れられる。一瞬ぴくりと指先が動いたら、遼雅さんが困ったような表情を作ってしまった。その顔に非常に弱い。