【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
さっきまで怒りを浮かべていたとは思えないくらいにやさしい瞳で見つめられてしまった。
「柚葉さん」
「……は、い」
「立ち上がれる?」
「え、と」
身体に力が入らない。
ぼうぜんとする渡部長を無視してしゃがみこんだ遼雅さんが、家と同じようにあまく笑って、指先を包むように撫でてくれた。
「また冷たくなってしまいましたね。すこし、捕まっていて」
こわばった体に腕を差し込んで、つよい力で抱き起された。
反射的に首に手を回して、お姫様のように持ち上げられていることに気づく。
「あ、専務っ……」
「名前」
「ええ?」
「呼んでくれないの?」
さみしそうな瞳だ。まるで、さっきまで起こっていたことなんて忘れてしまったみたいにあまい雰囲気の遼雅さんが、こてりと首をかしげてくれている。
ギャップに目が眩んで、ちらりと視線を渡部長にそらしかけた。
「ゆずは」
絶対に見せる気のない人が、体で渡部長の姿を隠してしまった。俺だけを見て、と言われている気になって胸がくすぐられる。
「う……、え、と」
「俺の名前、忘れちゃいましたか?」
「だ、って……」
「あはは、困った顔もかわいい。俺のかわいい奥さん」
「りょ、うがさん」
「はい、どうしたの? かわいい奥さん」
くすくすと笑いながら長い脚でゆっくりと歩いてくれる。
給湯室の惨劇も、渡部長も、全部を無視した遼雅さんが、ただ私だけを見て、あまく笑いながら囁いてくれている。
「柚葉さん」
「……は、い」
「立ち上がれる?」
「え、と」
身体に力が入らない。
ぼうぜんとする渡部長を無視してしゃがみこんだ遼雅さんが、家と同じようにあまく笑って、指先を包むように撫でてくれた。
「また冷たくなってしまいましたね。すこし、捕まっていて」
こわばった体に腕を差し込んで、つよい力で抱き起された。
反射的に首に手を回して、お姫様のように持ち上げられていることに気づく。
「あ、専務っ……」
「名前」
「ええ?」
「呼んでくれないの?」
さみしそうな瞳だ。まるで、さっきまで起こっていたことなんて忘れてしまったみたいにあまい雰囲気の遼雅さんが、こてりと首をかしげてくれている。
ギャップに目が眩んで、ちらりと視線を渡部長にそらしかけた。
「ゆずは」
絶対に見せる気のない人が、体で渡部長の姿を隠してしまった。俺だけを見て、と言われている気になって胸がくすぐられる。
「う……、え、と」
「俺の名前、忘れちゃいましたか?」
「だ、って……」
「あはは、困った顔もかわいい。俺のかわいい奥さん」
「りょ、うがさん」
「はい、どうしたの? かわいい奥さん」
くすくすと笑いながら長い脚でゆっくりと歩いてくれる。
給湯室の惨劇も、渡部長も、全部を無視した遼雅さんが、ただ私だけを見て、あまく笑いながら囁いてくれている。