【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

冷え切った指先がじんわりと熱に侵されて、こころがあたたかくなってくる。

こころのねつが、どうしようもなく熱くなって、何も言えずに、遼雅さんの胸に額を押し付けている。

私の仕草で、遼雅さんの低い声が小さく笑ってくれていた。


「かわいい。そんなにしがみつかなくても、絶対に離さないから安心してください」

「……来てくださって、ありがとうございます」


小さく囁くうちに、部屋まで戻ってきてしまった。

私を抱えながら器用にドアを開いて、簡単に施錠してしまう。そのまま役員室の中に連れられて、ついさっきまで遼雅さんが眠っていたソファの上に、丁寧に下される。


「ゆずはさん、抱きしめて良い?」

「りょう、」


肯定する前に、やさしく抱きしめられる。

床に膝をついた遼雅さんに前から抱きしめられて、身体がいまだに震えていることに気づいた。

遼雅さんにも、気づかれてしまっているだろう。


「りょうが、さん」

「うん、ちょっとだけ、このまま待ってね。すぐ摘まみだすから」

「う、ん……?」


抱きしめたまま、片手でポケットを弄って、携帯を取り出しているのが見える。

そのままどこかに電話をかけたらしい人が、私の背中を撫でながら声をあげた。


「橘です。渡が役員フロアに来ました。はい。……そう。俺の嫁に接触した」

「うん。はい。はやく対処してくれるかな」

「はい。もう次はないから。よろしく」
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