【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
ほとんど一方的に話して、携帯をソファの上に転がしてしまった。
束の間に静けさが生まれて、すぐに破られる。
「もう、一生柚葉さんの前には来ないから」
「……ええと、お電話、大丈夫でしたか」
「うん、あー、言ってなかったよね。人事部長は同期で、まあよく知ってるやつだから、頼れると思う」
「あ、りがとうございます。こんなことに、なるなんて、おもわなくて」
「柚葉さんは何も悪くないからね。……大丈夫。もうこわい人はいないから」
「……はい」
私に理解してもらえるように、わざわざ目のまえで電話をかけてくれたのだろう。
胸にやさしく響いて、耐えられずに遼雅さんの背中に両腕を回した。
ぎゅっとしがみ付いたら、全部が遼雅さんでいっぱいになる。
応えるように強く抱きしめられたら、もう、すべてを忘れて良いような気がしてしまった。
「怖い思いをさせてしまった」
「私が……、あんなに心配されていたのに、うっかり外に出たからです」
「ちがうよ。柚葉さんの行動を縛ること自体が間違ってるから。それだけは、わかってほしい」
「……いつもやさしいです」
「肝心な時に守れなくて、自分を殴ってやりたい気分だよ」
「ふふ、かっこよかったです」
「うん?」
「せなか、おおきくて」
『――俺のつまの名前を、気安く呼ばないでいただきたい』