【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
耳によく残る声だった。
たぶん、もう一生忘れないだろうと思う。
私のために、前に出てくれた。何もできない私のために戦ってくれていた。
「安心して、泣きそうになりました」
「泣いてもよかったのに」
「いやです」
「うん?」
「遼雅さんじゃない人には、みせたくないです」
話しながら、じわじわと涙がにじんでくる。
昔から、姉とは正反対に泣き虫だった。よく壮亮には泣かされたから、結構打たれ強くなったつもりだった。
腕の拘束がゆるんで、切ない瞳の遼雅さんと視線が絡まってしまった。
「全部俺がもらっていいんですか?」
「う、泣き顔、ぐちゃぐちゃだから、ひみつに、してください」
「はは、かわいいよ。でも、もう哀しまないでください。かわいい奥さん、きみにはやっぱり笑顔が一番だから」
「ふふ、もう。なきたいのか、わらいたいのか、わかんないです」
「どっちもできるなんて、柚葉さんは器用でかわいいです」
精いっぱい笑わせようとしてくれているのがわかって、なおさら泣きたくなってしまった。
手を繋いでほしくて指先に触れたら、何も言わずに、いつもと同じように握りしめてくれる。
そのねつがすきだ。あなたのものになりたい。
ぐちゃぐちゃの思考回路で、笑ってしまった。