【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「……部長、秘密にしてくれるかな」

「うん?」

「遼雅さん、結婚してるって、言っちゃったから……。噂広まっちゃいます」


隠すために、たくさん努力をしてきたのに、私のせいで壊れてしまいそうだ。

苦笑して見つめたら、すこしおどろいた目が、わかりやすく、あまく歪められた。


「あはは」

「ええ、なにが、おかしいですか」


どこまでもうれしそうな笑みで、声が滞ってしまった。遼雅さんは涙が流れた頬にやさしく触れて、静かに囁いてくれる。


「うん。そうなったらいいのにって、今、本気で思ってる」

「りょうが、さん?」

「最近気づいたんだけど……。あまやかしたいのに、柚葉さんが困って瞳が震えるのを見ると、いじめたくなるんだ」


どこまでもたのしそうな人に囁かれて、目が回ってしまった。

涙なんてあっさりと乾いてしまう。

呆然とする私の唇めがけてキスを触れさせて、すぐ近くで「かわいい」と囁いた。

遼雅さんのねつに、ただ翻弄されている気がする。


「な、に」

「俺のかわいい奥さんだって、見せつけたくてたまらない」

「りょうがさん、」

「噂、広まってくれたらいいですね。そうしたら、もう誰も俺の奥さんに変なことしないだろうし」

「ええ、あの……」

「毎日ここに、指輪嵌めてくれるんだろうから」


繋いでいた手を取って、いつものように恭しいキスを指先に捧げてくれる。王子様のように片膝をついた人が首をかしげて言った。


「もう、そろそろ俺の奥さんだって、言いふらしてもいいですか?」

「遼雅さん、あの」


「もう、俺は結構、我慢の限界です」


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