【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
エレベーターで最上階を選んだら、すぐに役員フロアにたどり着く。
自室へ行く前に化粧室に寄って、鞄からポーチを取り出した。
パウダーを塗り直して、ビューラーで睫毛をもう一度あげてみてから、最後にコーラルカラーのリップを塗り直した。
できるだけ綺麗にお化粧を直して、鏡の前で真顔を作ってみる。
お化粧一つで、とくに大きく変わることはないと知っているけれど、好きな人には、すこしでもかわいいと思ってもらいたい。
『ゆずは、かわいい』
「あー、うう、だめだ。にまにましてる……」
遼雅さんの声を思い出すだけで、ふにゃふにゃになってしまう。
どうしたものだろうか。
遼雅さんの瞳を思い返して、むっと顔に力を入れてみる。その表情がすこしおかしくて、一人で笑ってしまった。
なんだかんだと言いながら、壮亮は遼雅さんのことを気に入ってくれていたみたいだ。
うれしくなって、やっぱり鏡に映る自分は、小さなころの自分と同じように、にまにまと笑ってしまっていた。
はやく遼雅さんにも、たくさんお話したい。
結局また遼雅さんのことを考えてしまっている自分に気づいて、笑ってしまった。
「……だいすきすぎる、どうしよう」