【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「かわいい。もう一回、良いですか?」

「……だめ、ですよ、起きないと」


毎日このやり取りをしているのに、遼雅さんはすこしも飽きないらしい。

付き合っていたらそのうち許可を取る気もなくなった遼雅さんに、唇が熱くなってくるまで続けられてしまう。

さみしそうな瞳に声がうっと詰まっても、知らないふりをして、体を背けた。

起き上がろうとしたところでぎゅっとお腹に腕を回されて、遼雅さんの熱に逆戻りする。


「も、遼雅さっ」

「可愛い奥さん、もうちょっとだけ」

「遅刻しちゃいます」

「うん、でも昨日のきみが早く寝てしまったから」


すり、とうなじに額を押し付けられる感触で、くらくらしてくる。契約結婚とは、本当にどういうことなのだろうか。


「あまやかしたくて、たまんない」


言いながら、簡単に私の体をくるりとひっくり返して、もう一度視線を合わせてくる。

目が合ったら、何の面白みもない私の顔を見て、あまいアイスキャンディーを溶かしてしまったみたいな笑顔を作ってしまった。


「柚葉さん」

「ん、なん……っ、ですか」


ちゅ、ちゅう、と飽きもせずに繰り返し唇を寄せて、私の声にとろけそうに笑う。橘遼雅は危険な人だ。


「可愛い。可愛すぎる。――食べちゃいたいくらい」

「っん、だめです、今日は9時から商談……っ」

「じゃあ、今夜はいいんですか?」
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