【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
よくよく考えればセキュリティカードもなく入れる人間はいないから、ほとんどこの場に来るのは私だけだ。なんだか急に緊張して、静かに扉を開いた。
「し、つれいします」
「うん?」
ひょっこりと顔を覗かせたら、やっぱり書類と睨めっこしていたらしい遼雅さんと目が合った。
眼鏡姿もかっこいい。全部かっこいいから、もう顔が緩んでしまうのは仕方がないと思う。
「ふふ、戻りました」
はじめから笑ってしまっている。
困った。
すこし気恥ずかしくなってドアから動かずに顔だけを出して見つめてみたら、首を傾げた遼雅さんがすぐに眼鏡を外して立ち上がってしまった。
「おかえりなさい。柚葉、こっちおいで」
「……はい」
とろけてしまいそうな笑顔だ。
胸がくるくるして、忙しい。役員室の真ん中あたりで立ち止まった遼雅さんが、軽く両手をあげて待ってくれている。
もう、抱きしめてもらわなくても、じゅうぶんすぎるくらいに身体がぽかぽかしているのに、知らないふりをして遼雅さんの前まで歩く。
目のまえで足を止めて、同じように首を傾げたら、遼雅さんの目がやわく眇められた。
「抱き着いて、くれない?」
「したいです」
「じゃあ、おいで」