【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
あまく囁かれたら、我慢なんてすこしもできなくなってしまった。
ぎゅっとしがみ付いたら、やさしい腕が同じように抱きしめてくれる。
はじめて会ったときから、すてきな匂いのする人だと思っていた。今もずっとそうだから、もしかしたら、一目惚れをしてしまっていたのかもしれない。
遼雅さんのことが好きだと自覚するまでに、すごく時間がかかった。だけど、だからこそ、たぶん隣にいることができた。
複雑だなあ。
抱き着いた瞬間に好きですと言いかけたから、慌てて口を噤んでいる。遼雅さんの胸に頭を押し付けて、だいすきを隠してみた。
「柚葉」
名前を呼ばれるだけで、とろけてしまいそうだ。
困って、すこし息を吸ってから「なんですか」とつぶやいてみる。思ったよりも冷静そうな声を出せているような気がして、ひどく安心してしまった。
「……何もなかったですか?」
「はい?」
何もとは何だろう。
不思議になって顔をあげたら、まっすぐに私を覗き込むひまわりのような綺麗な瞳と、ばっちりと目が合った。
相変わらず、吸い込まれてしまいそうな目だ。狼狽えて顔をそらしたら、すこし呼吸を置いてから、もう一度遼雅さんの声が聴こえてきた。
「……いや。たのしかった?」
「あ、はい、たのしかったです」