【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
かなり頻繁に誘われている気がしないこともない。
契約結婚の定義がわからない。
返事に困っていると勝手に「楽しみにしてます」と頬を撫でて自己完結されてしまった。
「遼雅さん、」
「おはようございます」
「……おはようございます」
ひょいっとベッドの上に座らされて、同じく座っている人を見上げている。
あつくとろけてしまいそうだった瞳は、すこし落ち着いたようにも見えた。
毎朝こんな調子なのだけれど、遼雅さんの趣味が『特定の相手をあまやかすこと』だと教えられてから、自惚れたりせずに、隣にいることを決めた。
「柚葉さん」
いつものように遼雅さんが両手を広げて差し出してくれる。これ以上に気恥ずかしいことを言ったりしたりしている人なのに、なぜかいつもこの時だけはすこし恥ずかしそうに視線が揺れるから、可愛らしいと思ってしまう。
胸が鳴ってしまうのを無視してそっと抱き着いてみる。やさしいあたたかさに触れて、心が落ち着いてきた。
同じように背中に手を回して、片方の手はやさしく髪を撫でてくれていた。充電と称して一度お願いしてから、どんなに恥ずかしそうにしていても付き合ってくれている。
「もう、大丈夫です」
「あはは。そう? 温まった?」
「はい」
「寒くなったら、いつでも言ってね。これくらいならどこでもできるから」
多忙な専務にそんなことをさせるわけにはいかない。
あくまでも私と遼雅さんの契約結婚の効力があるのは、この家の中だけなのだ。