【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「柚葉」
「うん?」
「愛してるよ」
まっすぐすぎるくらいに囁いてくれる。
特別じゃない日常に捧げてくれるから、いつも胸があつくなって仕方がない。
橘遼雅はいつもそうだ。
負けじと見つめて唇に触れたら、どこまでもやさしい人が、とろけそうに笑ってくれた。
「私も、好きです。大好きです」
囁いたら、全部がすてきに変わってしまう。
私の言葉で、遼雅さんがもう一度つよく抱きなおしてくれた。
やさしい匂いがする。
たまらなくすきで、愛おしいにおいだ。私の帰るべき場所になった。どうしようもなく、すてきなことだと思う。
「ああ、困ったなあ」
幸福なにおいの中で、遼雅さんが私にしか聞かせてくれないあまい声で、困り果てたような音を上げている。
本気で悩んでいるような声色に振り返ったら、すこしだけ眉を寄せた遼雅さんと視線がぶつかった。
「柚葉の子どもはたまらなくほしいけど、そうすると、しばらく会社では会えなくなる」
何度か、家で待っていてほしいと思っていることをぽろりと聞かされていたのに、今では会社で会えることを楽しみにされているのだと知れてしまった。
すこし誇らしい気分になってしまう。
それだけ、私の愛に安心してくれているという意味だったらいい。
どこへ行っても、遼雅さんの胸の中に戻ってくる。私の気持ちが伝わっていたらとてもうれしい。