【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

つまは、いつも甘い匂いがする。

くたくたに疲れきって眠る瞼に口づけて、生命の鼓動を確認している。

初めて見た時から、可愛らしい顔立ちであることは知っていて、次に俺の目の前に現れた時には、軽い眩暈があった。


『佐藤柚葉と申します。まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いいたします』


その時の感情はどうにも形容しがたい。

近づいてはいけない予感があった。目が合ったとき、おそろしくまっすぐで、穢れない敬意の匂いに目が潰れそうになったことを覚えている。


「ゆずは」


呼びかけても目を覚まさない。

何度も欲しがって、狭い背中に指先を伸ばして抱きしめていた。これ以上ないところまで近づいたら、どこまでも柚葉の魅力にとりつかれて、戻れなくなる。

依存させようと思ったのは初めてで、どうやっても落ちてこないまなざしに、今もまだ、求め続けている。

見つかってしまったら標本にでもされてしまいそうなくらいにうつくしい身体を、無防備に俺の眼前に投げ出して、熱を持て余したまま眠り続けている。

こうしてしばらく眺めてからでなければ、眠る気になれない。

どうしてこうも可愛らしいのか。


「ゆずは」


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