【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
目覚めないと知っていて、頬に触れた。
羽根が生えているというのも、あながち間違いでもないように思える。この世の奇跡のような罠に嵌められて、俺の人生は大きく変えられてしまった。
寄り添って、腕に抱き込む。
すこし低い体温が胸に擦れて、ようやく柚葉の存在を確認している。落とそうと思って手を出したはずが、ますます突き落とされた哀れな男の前で、柚葉は不可思議そうに首をかしげている。
「あいしてる」
執着しない天使の前で、俺はただの哀れな男でしかない。
固執のない人生だった。
柚葉に出会うまではそう思うこともなかったのだが、触れてはじめてそうだったのだと気づいた。
女性関係にはあまりいい思い出がない。もともと実家が裕福だったことにも起因しているだろうが、周りには執着を見せてくるものばかりがそろっていた。
つねに輪の中心に引き込まれることが多くて、いらないと言っても捧げられた分だけ、同じように返さなければ顔を顰められた。
求められるものを差し出せば、すこしの間だけでも満足してくれる。
処世術を身に着けてその通りに行動するようになっていた。おかしくなったのは、社会人を過ぎたあたりからだろうか。