【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
初恋は、わりと、いや、かなり消したい過去だ。
「峯田~、昼に悪い……」
「すいません、今日はちょっと、用事あるんで、午後でもいいっすか?」
「ん? ああ~、はいはい。頑張るねえ」
「いや、マジでそういうんじゃないんですけど」
「いいって、行ってこい。目指せ略奪」
「……ありがとうございます」
金曜の昼は、中学時代から同じやつと飯を食うことになっている。
毎週毎週律義に会っていれば、周りはまずそういう関係だと思うだろう。今までは生ぬるい目で見られていたが、最近はどこか不安げな視線を浴びるようになってきた。
それもこれも、諸悪の根源はただ一人だ。
「そうくん!」
笑って手を振っている。
何度俺が注意しても改めることがない。まるで俺ただ一人に出会えるのがとんでもなくうれしいような顔をしてくる。
もちろん本人はそのつもりなのだろうが、相手に勘違いをさせるような容姿をしているから悪い。
「柚、声でけえよボケ」
「あ、ごめんね」
はっとして口元をかわいらしく手で隠した。
いちいち仕草が可愛らしくて、頭が痛い。もはや突っ込む気にもなれずに歩き出せば、ちょこまかとひな鳥のように隣について、歩く姿が見えた。