【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
この場にいる全社員の視線が、ガラス越しの廊下で紙をぶちまけた女と、それを拾う男の姿に向けられていることに気付いた。
よく見なくともわかる。
その男の秘書役に我が幼馴染が就くと知れ渡ったとき、『専務の役員室は顔面偏差値がバグってる』とひそかに噂になった。
柚葉は俺が初めて見たときから、つねに周りに同じ反応を与え続けてきていた。
どこへ行っても誰と話していても、同じ言葉を言われ続けてきた。ここでもその顔面は整っているものとして判断されている。
あいつの『かわいい』は魔性だ。
柚葉は視線を床に落として、散らかった紙をあたふたと拾っているが、男のほうは、紙を拾いながらも視線がずっと柚葉を見つめている。
その視線の熱さで、ほとんどの人間が事実に気づいてしまいそうだ。どうせ隠すつもりもない。
「うわ、そういうことか?」
すこし前まで横で俺を茶化していた先輩が、口をあんぐりと開けている。
橘遼雅は、拾い上げた書類を柚葉から受け取って、柚葉に手を伸ばした。
当たり前のように柚葉の髪に触れて、耳にかけた。屈んだときに、少し乱れたのだろうか。
あきらかに上司と部下の距離ではない。
それに加えて柚葉がやわく笑ってしまったら、もう、どう見てもお似合いの男女にしか見えなかった。
よく見なくともわかる。
その男の秘書役に我が幼馴染が就くと知れ渡ったとき、『専務の役員室は顔面偏差値がバグってる』とひそかに噂になった。
柚葉は俺が初めて見たときから、つねに周りに同じ反応を与え続けてきていた。
どこへ行っても誰と話していても、同じ言葉を言われ続けてきた。ここでもその顔面は整っているものとして判断されている。
あいつの『かわいい』は魔性だ。
柚葉は視線を床に落として、散らかった紙をあたふたと拾っているが、男のほうは、紙を拾いながらも視線がずっと柚葉を見つめている。
その視線の熱さで、ほとんどの人間が事実に気づいてしまいそうだ。どうせ隠すつもりもない。
「うわ、そういうことか?」
すこし前まで横で俺を茶化していた先輩が、口をあんぐりと開けている。
橘遼雅は、拾い上げた書類を柚葉から受け取って、柚葉に手を伸ばした。
当たり前のように柚葉の髪に触れて、耳にかけた。屈んだときに、少し乱れたのだろうか。
あきらかに上司と部下の距離ではない。
それに加えて柚葉がやわく笑ってしまったら、もう、どう見てもお似合いの男女にしか見えなかった。