【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「青木さん、そろそろお迎えが来る時間ですね」

「あ……、ですね」

「はい、準備して帰ってください」


先輩は社内結婚を機に、部署の配置転換で秘書課に来たと言っていた。

基本的に社内婚は認められていても、近しい部署からは外されることが多い。暗黙のルールらしいから、私と遼雅さんの関係については完全な黙秘が続けられている。

ぼうっと考え込んでいれば、専務の視線がこちらへと向けられる。いつものやさしい微笑みだった。


「佐藤さんも、今日は先に上がってください」

「何か、お手伝いできることがあるんでしたら……」

「いえいえ。たまに早く帰ってゆっくりリフレッシュするのも大切です」

「それはそうですが……」

「また明日、元気いっぱいで会社に来てください」

「……わかりました」

「気を付けて帰ってくださいね」


きらきらした笑顔で言われて、言葉に詰まったままぎこちなくうなずく。

後ろからくすくすと笑い声が鳴って、思わず先輩のほうを見つめてしまった。


「なんだか、新婚夫婦みたいですね。気を付けていってらっしゃいって見送る奥さんと、まだ一緒にいたい旦那さんみたい。あはは。配置は逆ですけど」


先輩には、本当に何度も驚かされて心臓が飛び出そうだ。
< 41 / 354 >

この作品をシェア

pagetop