【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「青木さん、そろそろお迎えが来る時間ですね」
「あ……、ですね」
「はい、準備して帰ってください」
先輩は社内結婚を機に、部署の配置転換で秘書課に来たと言っていた。
基本的に社内婚は認められていても、近しい部署からは外されることが多い。暗黙のルールらしいから、私と遼雅さんの関係については完全な黙秘が続けられている。
ぼうっと考え込んでいれば、専務の視線がこちらへと向けられる。いつものやさしい微笑みだった。
「佐藤さんも、今日は先に上がってください」
「何か、お手伝いできることがあるんでしたら……」
「いえいえ。たまに早く帰ってゆっくりリフレッシュするのも大切です」
「それはそうですが……」
「また明日、元気いっぱいで会社に来てください」
「……わかりました」
「気を付けて帰ってくださいね」
きらきらした笑顔で言われて、言葉に詰まったままぎこちなくうなずく。
後ろからくすくすと笑い声が鳴って、思わず先輩のほうを見つめてしまった。
「なんだか、新婚夫婦みたいですね。気を付けていってらっしゃいって見送る奥さんと、まだ一緒にいたい旦那さんみたい。あはは。配置は逆ですけど」
先輩には、本当に何度も驚かされて心臓が飛び出そうだ。