【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「……抱きしめても?」


あまくて胸に痺れる。

声を失っていたら、右手が腰の裏に回ってやんわりと優しい力で抱き寄せられた。

熱はいつもと同じくやさしくて、今朝に抱きしめられた時と変わらない匂いに包まれる。意思とは真逆に、くたりと力が抜けてしまった。


「よい、しょっと」

「わ、」


くるりと体を回して、遼雅さんの脚の間にすっぽりと体を置かれてしまった。後ろから抱きしめてくる人が「あー、」とため息のような感嘆を漏らす声が耳に触れて、擽ったい。


「たち、」

「名前」

「……りょう、がさん」

「うん?」


突然人が入ってくるとは思えないけれど、それにしてもここは会社だ。どぎまぎしていれば、覗き込むように遼雅さんの顔が近づけられた。


「りょう、」


ちゅ、と頬にキスが落ちてくる。すこし顔を離した人が満足そうに笑って、私のお腹に回った手に力を込めた。


「柚葉」


耳に響く声に弱い。

右肩に顎を乗せて、静かに私の名前を呼んでくる。振り向く力はなくて、ただ俯いていれば、くすくすと笑う音が耳に触れた。


「一つ、弁明してもいいですか?」

「な、んですか?」

「さっきの女性」

「女性?」

「園部さん」

「はい」
< 43 / 354 >

この作品をシェア

pagetop