【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
喋りながら片方の手で私の髪を弄んでいる。
すでに家モードだ。
垂れ下がった私の手を拾って薬指を唇に近づけては、頬と同じように丁寧に触れる。まるで、そこにあるはずのものを確かめるようなキスだ。
「彼女とは、何もないです」
「ええ、と……?」
疑っていると思われていたのだろうか。驚いて顔を向ければ、すこし困ったような顔をしている遼雅さんが見えた。
「俺の奥さんは柚葉さんだけです」
「……はい、わかってま、す?」
「浮気してないですよ」
心の底から信じてほしい人にこいねがうような瞳だ。
うっと詰まりかけて、苦笑している。
この、私だけを考えているという主張に胸がぎゅっと痺れてしまう。
こんなにも素敵な人に懇願される不思議と、そうさせてきた人たちへの遼雅さんの苦労が垣間見えて、どんな顔を作ればいいのかわからなくなってしまうのだ。
「ええと、わかってます、よ?」
そもそも私たちは契約結婚だ。とはさすがに言わずにつぶやく。
私の声にまだ納得できなさそうな人が、自分のポケットを弄って、携帯を取り出した。
「遼雅さん?」
「携帯、見ますか?」
以前一度言われたことがあったにもかかわらず、二度目も新鮮に驚いてしまった。
私の反応を是と受け取ったらしい人が携帯を操作し始めそうになっているのを見て、慌てて遼雅さんの大きな手を握った。