【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「うん?」
「だめです」
「だめ?」
「そのあまやかしは、だめです」
なるべく楽しく二人でやって行こう、と話したときに、人を依存させるような行動をしてしまったら、声に出してほしいとお願いされていた。
咎めるようにつぶやけば、後ろで遼雅さんが黙り込んでしまう。
「遼雅さん?」
「ごめん、完全に、柚葉さんに知ってほしくて、暴走しました」
「う、」
理由までかわいらしいから、依存したくなってしまうのだろう。抱きしめる腕の力が緩んだ隙に、上体を捩って遼雅さんのほうを振り返る。
予想通り、少し困ったような笑みを浮かべている。
もう、どうしてそんなにも可愛らしいのだろう。
「遼雅さん」
「うん?」
「すこしも疑ってなかったので、安心してください」
真剣に言って笑ってみれば、遼雅さんの瞳が揺れた。同時に体から力が抜けたらしい遼雅さんの手が、ぎゅっと私を抱きしめてから、もう一度見つめ合う姿勢に戻してくれる。
「……ああー、もう」
「遼雅さんの奥さんは、私です」
「うん」
「試したり、勝手に疑ったりしないですから、安売りはダメですよ」
背の高い、大きな人を諭している自分が不思議だ。
しゅんとしてしまった人の頭を柔く撫でて、目をまるくした遼雅さんに思わず笑ってしまう。
「ふふ、」
「……ああ、もう、だめだー」
ふにゃふにゃになった遼雅さんが肩に頭をこすり付けてくる。その匂いでさえやわらかくて素敵だから、橘遼雅は危険なのである。
「遼雅さん、もう、私帰らないと」
「うん」
「遼雅さん?」
「柚葉さんの唇に、キスしてからでもいい?」
ぱっと顔をあげて、首をかしげていた。そのくせに、私が吃驚しているうちに、唇に柔らかに乗せられてしまう。
「ああー、かわいい」
「りょう、」
「……あと、もう一回抱きしめて良いかな」
「10秒だけ、なら……?」
疑問形の私なんて気にしない遼雅さんの熱に、すっぽりと包まれてしまう。こうなると全部がどうでもよくなるから本当に危ない。
「かわいい、はやく帰りたい」
「はい、待ってますね」
「ああ、もう。……今すぐ食べたい」
「りょう、」
「ゆっくり待っててね」
橘遼雅は危険です。