【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
おさとうみさじ
“今、家に着きました”
丁寧に打ち込んで、一番連絡を取り合っている相手に送りつける。
画面をぼうっと見ているうちに“無事で何よりです”と返事が返ってきた。できる社会人よろしく、橘遼雅のレスポンスは早いと思う。
それもまた、今までの苦労の賜物なのだろうか。
いちいち引っかかってしまうから、ひとりで苦笑してしまった。買ってきた食材をキッチンに置いて、一つ息をつく。
“遼雅さん、あまり無理しないでくださいね”
手に持っていた携帯でもう一度言葉を打って、ためらうことなく送信する。そこまで終えて、リビングのテーブルの上に携帯を置いた。
遼雅さんが選んだマンションの一室は、間接照明だけでも生活できそうな気がする。
ロマンチックな雰囲気が出るけれど、映画を観ながら使ったりしていても、遼雅さんにあまやかされる熱でほとんど楽しむことができたためしがない。
結婚するときに姉からプレゼントされたものがたくさんある。
昨日割ってしまったお皿に今更悲しくなって、一度置いた携帯を手に取った。姉とは10歳ほど年が離れているけれど、いまだに長電話をしたり、一緒にショッピングに行ったりするほどの仲だ。