【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
つい一週間前にも通話した履歴が残るメッセージを開いて“お姉ちゃんからもらったお皿、割れちゃった。かなしいよ~”と送ってみる。同時に棚からエプロンを取り出して、首から下げた。
花柄のエプロンは、これまた姉夫婦からの贈り物だった。これが汚れてしまったら、ますます悲しいと思う。
絶対にそんなことにはないよう、細心の注意を払っていることは、遼雅さんにいつも笑われてしまっていた。
とくにお返事のない携帯に恨めしくなって、腰にエプロンの紐を結びつける。
何年経っても姉には甘えっぱなしだ。
姉夫婦には小学生のころからよくして貰っていたから、憧れのような存在だ。
ふと自分と遼雅さんがそういう関係になれていないことに思い当たって、考えるのをやめた。
「あ、」
そろそろ料理をしようか、と思っているところに携帯が鳴ってしまう。遼雅さんかなと思ったのは一瞬で、“お姉ちゃん”と表示されたディスプレイを見たら、頬がほころんでしまった。
一瞬でも遼雅さんだと思った自分がすこし恥ずかしい。遼雅さんは今、一生懸命働いているはずだ。
『ゆず~?』
「うん、お姉ちゃん?」
姉はいつも笑顔溢れるやさしい女性だ。
声を返したら、今にも笑顔が見えそうなくらいのトーンで「久しぶり」と声をかけてくれる。実際にはまったく久しぶりでもないけれど、姉の時間の単位は独特だ。