【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
はずかしい。
狼狽えている瞳さえも、じっと観察されている。目が合ったら、やわく瞼が笑った。
「たち、」
「名前」
訂正させられて、ぶわあっと昨日の熱が蘇ってくる。
間違えるたびに直されたから、声が壊れるまで呼ぶことになった。思い返すだけでもはずかしくて、遼雅さんの胸に額を隠しながらつぶやく。
「りょう、が、さん」
「……覚えてくれていてよかった」
「おぼえて、ます」
「ぜんぶ?」
「……た、ぶん」
ゆっくりと髪を撫でられている。
愛するようなあまい指先に勝手に痺れて、とっくに好きになってしまっていそうだ。
「はは、柚葉さん」
「は、い」
耳に吐息が当たってくすぐったい。
わざとではないだろうけれど、本当に遼雅さんのすべてに弱いから、たすけてほしい。
「――温まった?」
すこし楽しそうな声だ。
もう、絶対に好きにならないなんて、むりだとおもう。だって、もう、こんなにも胸がこわれてしまいそうだ。
何も言えないでいれば、もう一度素肌のまま、ぴったりと抱きしめられる。遼雅さんの長い脚が私の脚の間に、つう、と触れる感触だけで、おかしな声が飛んだ。
「も、う……、あ、つくるしいです」
ほんとうに、もう、あつすぎる。
困り果てて、たぶん泣きそうな声が出てしまっていただろう。
声を聞いた遼雅さんは、どこまでも楽しそうな笑い声をあげて、無防備な私のこめかみに、ちゅう、とキスを落としてくれた。
「ああー、もう。食べちゃいたいくらい可愛いなあ」
何度思い返しても、結局私を選んでくれた理由なんてわからないまま、あの日の熱を思い出して、一人恥ずかしくなるだけなのだ。