【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「かわいい」
「かわいくな、あっ」
「もうふにゃふにゃだ」
「りょうがさん、が」
「うん、俺のせいです」
「もう……っ」
「たくさんあたためてあげるから、ゆるしてくれるかな」
「こ、いうこと、しなくても……」
「うん?」
一定の間隔で背中を撫でられている。やさしさにあまえて、いつまでもこの腕の中にいたくなってしまう。
どこまでも欲張りになってしまいそうで、自分がおそろしいのだ。
「抱きしめてくださるだけで、じゅうぶん、あたたかくて」
だから、もうやめませんかと、最後まで言い切ることは終ぞなかった。
ぐるりと視界が回った。
問いかける暇もなく誰かに押し倒されて、うすいひかりの中で、あつい瞳の遼雅さんが、ためらいなく私の口を、自分の口で塞いでしまったのが見えた。
吃驚して抵抗してみても、もう何度も共有した熱に抗う方法もない。
大胆な指先で触れる。
身体中を確認して、すこし前に見た時から何かが変わってしまっていないか、つぶさに見つめられているようだ。
遼雅さんのすべてに酔わされて、何かを考えている隙もなくなってしまう。
「柚葉」
「……ゆずは」
脳内に残る音が、遼雅さんの吐息と掠れた声だけになる。
ほかのすべてがかき消されて、ただ泣きそうな瞳で、見上げていることしかできない。