冷凍庫の中の騎士
 メイクを落として、シャワーを浴びて、髪を乾かし、お気に入りのモコモコ部屋着を着て、目元にパックをしてから、カップアイスのふたを開ける。

「んっふっふ、さすがわたし!」

 ほどよく溶けたアイスをぺろりと舐める。タイミングはバッチリだ。

「最高……」

 アイスを片手に、まずスピーカーを起動し、お気に入りの洋楽プレイリストを流す。歌詞がよくわからないから歌えないけど、ふんふんとリズムにはのれる。
 アイスを食べながら、おにぎりと半熟卵をお皿にのせる。もちろん卵は半分に割る。

「おいしー、アイスはやっぱりチョコミントー……」

 唐揚げはトースターへ、肉まんはレンジに入れる。

「お、さ、け、はー、シャンパングラス!」

 だれかの結婚式に引き出物に、買ってきたスパークリングの日本酒を注ぐ。溶けたアイスを飲むように食べきってから、お酒を一口。

「はぁー溶けるー」

 そうして、あったかくなった唐揚げと肉まんを食卓にもっていけば完璧だ。

「いただきます!」

 しあわせのはじまりは、ごはん。昔からそう決まっているのだ。
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