COSMOS
「ルナ、前原さん来ましたー?」

「いや、まだいらっしゃってないですぅ。双眼鏡で見てもいるんですが、数十メートル先にもそれらしき人がいません」


困ったなぁ。

ここまで来てドタキャンは有り得ないっすよ。

確かに数ヵ月後にはこの世を去ることが確定している方と入籍はしないにしても式を挙げるというのは、相当な覚悟が必要だ。

指輪のサイズを聞いた時、声も体も震えていたし、今日までに前原さんは1度も桃井さんに会いに来ていないらしい。


「やっぱり死ぬワタシとなんて挙式したくなかったんだよ。ワタシのこと、忘れたいに決まってる。友くんに悪いことしちゃった...」

「そんなことないっす。絶対前原さんは来ますから、最後まで信じましょう」

「でも......」


気落ちしている桃井さんににゃんにゃんが日だまりの笑みを向ける。


「大丈夫ですよぉ!前原さん、すっごくお優しくてカッコいいお方なんでしょう?

きっとぉ、バラの花束100本でも持って来ますからぁ。

だから、根気強く待ちましょぉ!

それに、たとえ来なくても桃井さんのドレス姿を見たい方が集まってます。

キラキラにメイクして皆さんに可愛くてキレイな桃井さんを見てもらいましょう」

「ええ」


こういう暗い雰囲気の時はにゃんにゃんが大活躍してくれる。

どんな邪気も吸い込んで笑顔にしてくれるにゃんにゃんには感謝しかない。

ありがとう、にゃんにゃん。

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