COSMOS
「さっくん、最後の練習始めよ~」


向こうのコートから羽依の声が聞こえてきた。

おっと。

これはまずい。

羽依が練習に付き合ってくれているというのに、完全に別のことを考えてた。

オレは太ももをパンっと叩いてコートの中央に向かっていった。


「羽依ごめん。相手よろしく」

「りょぉかい。ねぇ、さっくん。本気出していい?」

「もちろん」

「じゃあ、わたし、がんばっちゃうね」


羽依には久遠のことは黙っている。

久遠のためなんてことを話したら、いくら温厚な羽依でも機嫌を損ねてしまうかもしれないからだ。

あくまでもオレは自分が楽しんで、なおかつ勝てるように精一杯頑張る。

うん、それが正解だ。

オレはそう自分に言い聞かせてから、最後の練習を始めた。

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