COSMOS
オレはそれを聞いた途端、咄嗟に腕が動いた。


「あのー、苦しいんすけどー」


オレの腕の中で、久遠はもごもごと抵抗する。

だが、オレはやめなかった。

この手を離したら、またいなくなってしまうと思った。

やっと掴めたのに......離したくねえよ。


「久遠、ありがと。戻ってきてくれてありがとう」

「キモいっす。てか、早く離して下さい。カノジョさんに知られたら私ギロチンされるんで、マジで離して下さーい。まだ死にたくないんすよ、私ー」

「ごめん...」


だけど、まだ......

まだこの体温を感じていたい。

どこか冷たくて、でも確かに優しくて温かくい。

そんな温もりを感じさせてくれるのは、

久遠由紗、

お前だけなんだよ。

だから、居なくなられたら困るんだ。

もう、オレの側からいなくなってほしくないんだ。

頼む。

お願いだ。

ここにいてくれ。

そう願いながら、腕が折れそうになるくらいまで力強く抱き締めていた。



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