半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「は……?」

 同じ高さからサイラスと目が合う。

 そういえば、学院進学前には、早々に浮遊魔法を体得していたのだ。人間にとって高度な魔法であるらしいが、魔法方面の才能がほんと嫌だなと思う。

 自分だけの特権でなくなったリリアは、むぅっと頬を膨らませた。

「邪魔しないでよ。また雷撃をくらいたいの?」

 こちらを見据えているサイラスは、眉間に皺も寄せなかった。リリアの頭にある大きな狐耳がぴこぴこっと動いたが、彼の目はずっと彼女を見ていた。

 なんか調子が狂うな。一体何を見ているんだろう?

「ちょっと近いから、あっち行って」
「これくらい、いいだろ。お前の場合、挨拶の距離感がありすぎるんだ」

 まぁ、手だって握ったことさえないしね!

 魔力酔いの件に関して、社交の場で再会した宰相ハイゼンに、びくびくしながら説明されて試そうとしていたのを知った。

 そもそもあの人、国で二番目に偉い人なのに何を怖がっていたのかしら?

 ふとリリアは、隣でにっこりと笑っていた父との風景を思い返して、そう疑問に感じた。
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