半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 地上へと降りて、久しぶりに草に触れる感触を楽しみながら歩いた。

 屋敷の敷地内にある原から、木々のある方へと進む。

 日差しが、きらきらと木の葉の間から降り注いでいて、綺麗だ。太陽の光は心地良く、まだまだ本格的な夏には遠い。

 ここはツヴァイツァーが、庭師と面倒を見ている異国の木の樹園だった。昔、助けた大妖怪からお礼に頂いたもので、大事にしていたレイド伯爵家であっという間に茂ったのだとか。

 春になると、桃色の花をたくさん付ける立派な木だった。

 リリアの母であるオウカ姫も、とても馴染みのある異国の花なのだとか。

「景色に誘われて、この木に腰掛けていたところを、旦那様に見られたのですよ」
「それ、何度も聞いたわ。『異国の天女がいる!』が、父様の第一声だったんでしょ? 母様、びっくりしたって言ってたもの」
「ははは、旦那様ってほんとおバカですよねー。というかオウカ姫も、びっくりしたんじゃなくって、一目惚れで動けなかっただけなんですよー」

 アサギが、けろっとしてプライベート事情を暴露する。
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