半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
化け狸の里があるという場所は、濃い緑の植物が溢れていた。
やや霧が降りていて、重々しい木々の葉には蔦が絡んでいる。岩の道の左右にも雑草がはえ、少し古い時代の風景の中に踏み込んだみたいだった。
「いくつか里があるんですけど、ここが大妖怪の化け大狸〝タヌマヌシ〟様の領地になります」
先を案内しながら、カマルが言った。
リリアは、木々の葉が、高い位置で不自然にアーチを作っているのを見上げる。
「まぁ、そうなんじゃないかなとは思ってた。道の左右へ、植物が寄っているものね」
かなり大きな〝狸〟なのだろう、という姿が浮かぶ。
付き添い歩きながら、アサギがリリアを見た。
「姫様、足元に気を付けて」
「あ、うん。分かってるわ」
足元にごろごろとした石も転がっていたので、途中からリリアは浮いて移動した。転ばないか少し心配していたカマルが、安心して軽快な足取りで先を進み出す。
しばらくもしないうちに、目の前の道が行き止まりになった。
――否、これが例の岩だ。
それが壁のようになっているのだと気付き、リリアはまじまじと観察しながら、ゆっくりと見上げていった。
やや霧が降りていて、重々しい木々の葉には蔦が絡んでいる。岩の道の左右にも雑草がはえ、少し古い時代の風景の中に踏み込んだみたいだった。
「いくつか里があるんですけど、ここが大妖怪の化け大狸〝タヌマヌシ〟様の領地になります」
先を案内しながら、カマルが言った。
リリアは、木々の葉が、高い位置で不自然にアーチを作っているのを見上げる。
「まぁ、そうなんじゃないかなとは思ってた。道の左右へ、植物が寄っているものね」
かなり大きな〝狸〟なのだろう、という姿が浮かぶ。
付き添い歩きながら、アサギがリリアを見た。
「姫様、足元に気を付けて」
「あ、うん。分かってるわ」
足元にごろごろとした石も転がっていたので、途中からリリアは浮いて移動した。転ばないか少し心配していたカマルが、安心して軽快な足取りで先を進み出す。
しばらくもしないうちに、目の前の道が行き止まりになった。
――否、これが例の岩だ。
それが壁のようになっているのだと気付き、リリアはまじまじと観察しながら、ゆっくりと見上げていった。