半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 大きな岩は、続く道をどーんと塞いでいる。

「かなり大きいわねぇ……」

 岩のてっぺんは、屋敷の二階の窓よりも高いだろう。

 これを素手で運んだ大妖怪の大きさを思うと、どれほどのデカさなのだろうな、という感想も過ぎる。アサギが『とても大きい』と述べていた理由が、分かった気がした。

「こんなのを、もふもふの小さな狸に押し付けるだなんて、ひどい狸親父ね」
「もふもふって……あの、俺、もふもふ枠なんですか? 姫様の方が尻尾もゴージャスでもふもふなのでは……いちおうオスなので、可愛いという感じで言われるのも、ちょっと複雑なんですが」

 カマルが、困った様子でもごもご口にした。

 すると横から、リリアと岩を見上げたままアサギが言う。

「あなたは人型の見た目まんまの、ミニマムキャラです」
「そうなの!? でも俺の一族、みんな背丈同じくらいですよ!?」
「人間界では、子供サイズです」

 ふっ、この未熟者め、と三百年の妖狐感でアサギが言った。ニヤニヤと優越感で見下ろしたのち、「さてと」と目を戻す。
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