半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「この程度の岩のあやかしだと、姫様が威圧したら、起きそうですけどね」
「そうは思わないけど。だって、かなり大きいわよ?」
「岩のあやかしも、小妖怪の一つですよ」

 そう告げたアサギが、指を一つ、また一つ立てて教える。

「岩のあやかしの眠りを覚ます方法は、先に申し上げた『力づくで起こす』。もしくは、魔力で強さを上回ることです。俺と姫様の妖力は、それを軽くこえています」
「ああ、だから『威圧』なんて言い方をしたのね」
「でもその方法は、どちらも彼には使えません。姫様も、妖力のぶつけ合いの練習で感覚を掴んでいるので、もう分かっていると思いますが――彼は、すごく弱い」

 バッサリ評価を口にされたカルマが、ずーんっと小さくなる。

 けれどアサギは、分かってやっているのか、まるでトドメでもさすかのようにリリアへ続ける。

「本来の狸姿でもお分かりでしょう。仔狐ですが、大妖怪らしく俺よりも大きくなった姫様に比べると、こーんなんですよ」

 ……そんな、指で小さいことを示さなくたって。

 リリアは、反応に困ってしまった。アサギはあやかし関係だと、格下に厳しいところでもあるのだろうか。

 リリアは滅多に狐姿にはならなかった。人型でいる方が力も抑えられるというのもあるけれど……馬や牛と並んでも目立つ大きさは、年頃の乙女としては恥じらいもある。

「小さなあやかしでも、目覚めさせて、どかせられる方法はないの?」

 じーっと見てくるカマルに気付いて、リリアはアサギに話を振った。
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