半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 しかし、まだ決定していないことだ。

 空を飛ぶとなると、人の姿を解かなければならない。だからアサギは、人前で力を披露するわけにもいかなかった。

「マジで勘弁してくださいよっ。俺は狐の姿に戻らないと空も飛べないってのに、あの仔狐は……!」

 困ったことに、リリアは『半分人間だもん』の言い訳が通用しないくらい、立派な大妖怪だった。

 教えてもいないのに妖力を一部使いこなし、あの通り、移動手段に空を飛ぶということを平気でやってのけている。

 下位の妖狐だと、空中浮遊するまでの妖力が育つまで、もっと年月がかかる。

「俺でも長距離飛行は二十年かかったっての!」

 屋敷を飛び出したアサギは、口の中で愚痴った。

 リリアは父親のところで地面に降りるだろう。そう考えながら、ツヴァイツァーのいる畑に向かって全力で駆けた。


 ――その後、合流した先で彼はリリアを確保すると、大妖怪なのにまだまだ何も知らないでいる、という危機感が全くない六歳の彼女にお勉強させるべく、屋敷へと連れ帰ったのだった。
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