半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「その下準備が、地味に手間なので忍耐が必要です」
「忍耐、ですか?」
「とくに集中力のない姫様には、手伝えるのかどうか心配です」

 ふぅ、とアサギが思案顔で溜息をつく。

 失礼な。こうして目的ができてからは、勉強だってまぁまぁの集中力を発揮して、めきめき知識だって身につけているではないか。

「私はやるわよ! その下準備になら、妖力を貸してもいいんでしょう?」

 はいはい!とリリアは、浮いてアサギの目の前まで移動して主張した。

「姫様、そんなに可愛らしく視界いっぱいを遮らないでください。術の道具を作るのを察して言ってきたこと、撫で撫でして褒めたくなっちゃうじゃないですか」
「兄さん、俺との差がありすぎだね! 清々しくてすごいや! でも姫様には優しいんだなぁって安心しました――いったぁ!」

 叫んだ最後、ふぎゅっと断末魔をとぎらせて、カマルがアサギの足で地面に沈められる。

 リリアは、その様子に大きな目をパチパチさせてしまった。
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