半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 喋る動物が歩いているみたいで可愛いと、屋敷の者にも初日からカマルは人気だった。大人のオスなんですがとアサギがツッコミしても、みんなにはペット枠なのか、リリアと同じ部屋で寝泊まりした。

「まぁ、結婚予定の女性(たぬき)がいますからね。――そうでなかったら、俺が焼いています」

 食事の席で、アサギが拳を掲げて真剣な顔でそう言った。

 狸姿のカマルは、客人扱いで食事の席に同席していた。小さな前足で器用にスプーンを持ち、美味しそうに食べる様子を、使用人達が「かわいー」と見ていた。

「ははは、アサギは厳しいなぁ」

 ツヴァイツァーが笑う声を聞きながら、リリアはもふもふ狸の食事風景に、同じように癒されていた。

「これ、食べてみる? あ、狸も大丈夫だったっけ?」
「俺、化け狸だから基本的になんでも平気ですよー。へへっ、メイも、すごく料理上手なんです」

 惚気を口にしつつも、カマルが「お言葉に甘えて」とフォークを伸ばし、リリアから寄越された皿の上の料理を、ぱくんっと口に入れる。
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