半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 それから四年が経ち、リリアは十歳となった。

 アサギの教育指導のもと、引き続き令嬢としてのお勉強もこなしていた――のだが、最近はもっぱら外遊びの時間が多い。

 リリアは、成長期のため四肢がむずむずする期間に突入していた。

 特に走り回るのが大好きなお年頃だった。何が楽しいのか自分でも分からないのに、夢中になって原っぱを駆けたりした。

 思いっきり飛び跳ね、わーいと勢いのまま木に登りもした。しかし、珍しくアサギは叱ってこなくて、授業で部屋に戻りますよとも言ってこない。

「えぇ、えぇ、そんなお年頃の仔狐ですからね。姫様、いいんですよ、どうぞ存分に走り回ってください」
「衣装に皺がー、とか、土まみれにー、とか叱らないの? 木登りも全力ダッシュも、していいの?」
「仔狐には、そうしたくなる時期もあるのです。遊びも、成長に大切なものです。危なくなったら俺が止めますんで、じゃんじゃんやっちゃってください」

 難しいことは分からないけれど、今は『外で遊んでいい』というのが勉強らしい。すごく嬉しい。

「この草ねっ、走るとふわふわなのが飛ぶのがすっごい面白いの!」
「この時のために〝猫じゃらし草〟を植えていて正解でしたね」

 リリアが引き続き広い庭の原で走る様子を、アサギはうんうんと微笑ましげに見守った。
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